キノコに魅せられて ―随想―
黒田義則 (M34)
猛毒キノコの多いテングタケの仲間においしいキノコがある。真っ赤で見るからに毒々しいキノコだが、その名を「タマゴタケ」という。その赤さゆえに薄暗い森の中でもひときわ目立つが、このキノコを採って食用にする人は少ない。
つぼといわれる白いカマゴの中にいる間は、他のキノコと見分けがつかないが、タマゴを割って真っ赤な頭を出すと見間違うことはない。
日本のキノコの種類は七千種以上あるが、五千種以上が無名だという。従って、動物、木本、草本では極めて稀といわれる新種の発見は、キノコにおいてはそれほど難しいことではない。
平成10年8月、周南市大華山の中腹でテングタケの仲間と思われるキノコの幼菌を見つけ、図鑑で調べたが、該当するキノコはなかった。そこで、山口県立広瀬高校の「自然探訪講座」に入門し、担当講師に写真同定をお願いしたところ、写真を見るなり「すごい、すごい」の連発であった。
このキノコは、その年の5月に京都大学で開催された日本菌類学会で、当講師が新種として発表したばかりの「オオオニテングタケ」だったのである。
こうして、私とキノコの付き合いが始まった。近年は、冬虫夏草に興味が集中、珍しいものでは「ハチタケ」、「アリタケ」、「セミタケ」、「オオセミタケ」、「ツクツクホウシタケ」、「テッポウムシタケ」、「ウスイロタンボタケ」等で、一昨年はカメムシの大発生の年で「カメムシタケ」をカメラにおさめることができた。
そして、その年の秋には我々のキノコ仲間の一人が、山口県で初めて「トリュフ」を発見した。彼が興奮さめやらぬ面持ちで、その「トリュフ」を見せてくれるというので、早速写真撮影をさせてもらった。その後、試食したが、磯の香り漂い、まさしく日本人好みの美味なキノコであった。そのキノコの和名は「クロアミメノセイヨウショウロ」という。
このように、珍しいキノコと出会い、写真に撮るだけでなく、食べる楽しみもあって、ますますキノコに魅せられている。
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